140字SS

【指きり】

「指切りげんまん、ウソついたら針千本の~ます!指切った!はい、これで私と敬人はず~っと友達!」

 ―――なんて約束も交わしたな。
 ふと、幼き日の契りを思い出した。あの頃はただ純粋にお互いに「好き」だと言った次の日に喧嘩をしては「嫌い」だなんて言い合い、終いには取っ組み合いをして母に怒られたものだ。この約束も、彼女と大喧嘩した後に交わしたはず。理由こそ思い出せないが、二人して「友達やめる!」と叫びその後悲しくなって二人で大泣きしたあとに交わした約束だという事は今でも覚えている。
 すまん、。その約束、どうやら守れそうにない。

 だから、隣で白無垢を身に纏った彼女と新たな約束を交わそう。誓いの指輪を薬指に嵌めるという形で。

2020/01/26

【向日葵を追う】

 届きそうで届かない何かがあった。"それ"は確かに自分の手元近くに存在していたし、手を伸ばせば簡単に届く距離にいる―――そう分かっている筈なのに、何故か届かない。まるで砂漠に存在する蜃気楼なのではないかと疑ってしまう程に。
 「……何したの、急に黙っちゃってさ」
 そう言ってこちらに向ける笑顔さえ、今にも消えてなくなってしまいそうで。こんな気持ちを抱くのは初めてで、どうすればいいのか見当がつかない。……青く透き通った空が彼女の目を奪い、草木の香りを運ぶ風が彼女の髪を揺らして過ぎ去っていく。
 ―――おい、と声をかけるとまた彼女はこちらを振り向き返事をする。
 「なぁに、敬人」
 向日葵を思わせる笑顔を、たとえ掴めなかったとしても、この一瞬だけでも独り占めできるのなら、今はそれでいいと思ってしまうのだ。

2020/03/11

【おやすみ、マイスイート。】(よその子)

―――幸せって何だろう。
 ふと、隣で気持ちよさそうに寝息をたてている彼を見ながらそんなことを考えた。私にとっての幸せ……例えば両親が共に元気で明るく、健康に過ごしているとか、自分なりによく出来た曲を皆に聴かせてあげるとか、Trickstarの四人とこの先もずっと楽しく活動していけるとか。考えれば考えるほどあれこれ出てきて枚挙にいとまがない。けれど、その挙げた幸せの中にはいつだって彼―――北斗くんがいる。一緒に、私の両親に挨拶に向かう北斗くん、私が作った曲を誰よりも先に聞いてくれてたくさん褒めてくれる北斗くん、Trickstarの他のメンバーと楽し気に笑う北斗くん。いつだって、私の幸せには、必ず北斗くんの存在が必要不可欠なのだ。だからきっと、私の”幸せ”はそういうこと。

「おやすみ北斗くん、いい夢を」

 相変わらずすやすやと気持ちよさそうに眠る北斗くんの瞼にキスをひとつ落とした。あぁ、幸せだなぁ。

増えたら随時追加・更新します。

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