手を繋いで歩こうか

「待って待って、早いってば!」
 振り向けば、だいぶ息を切らしたが自身の後を追い、駆けている姿が見えた。珍しく生徒会の仕事を早めに切り上げることが出来た為、敬人がちょうど帰路につこうと考えていた時だ。とはいえ、時刻は既に午後七時をまわっているのだが。
「なんだ、まだ残っていたのか。とうに部活など終わっていただろうに」
「うん。まあでも大会近いし、ひとりで練習してたらこんな時間になっちゃってた!」
「あのな……。こんな暗くなってから帰ろうなどと、お前は女なのだから少しくらい危機感を持てと何度も、」
 そう強く言えば「ごめ~ん」と舌を出しては笑う。高校三年になっても、この幼馴染はどうしてこうも手が掛かるのか。
「全く。ほら、行くぞ」
 敬人はそう言って自然と手を差し出した。はそれを当たり前のように握り返す。 月明かりに、映る影がふたつ。夜はこれから、静かに更けていくのだった。

女の子と手を繋ぐ敬人くんがほしかったので。

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