御伽噺のように結ばれたい(中耳炎さん宅)

 例えば白雪姫。例えば灰かぶり。例えば―――。
 あげていけばキリのないおとぎ話の数々。例外はあれど、どの物語のお姫様も苦労の果てに自分の望んだ男と幸せになる未来が待っている。

「……なぁんて幼稚でくだらない展開でありますな、そう思いませんか」

 目の前にいる、こちらに見向きもせず興味ないと言わんばかりの女にそう零した。女は紺色の髪を靡かせながら「そうね」とだけ呟く。
 そう、くだらない。あまりにもくだらないから、逆に笑えてきてしまう。ひたすら殴られても耐えに耐え、人を憎まずいることで想い人と結ばれる―――なんて、あまりにも綺麗事すぎないか。私の魔王はそんな甘ったれた事を望んではいない。殴るから、殴り返せと。殴られっぱなしの根性なしに、かの魔王が振り向くものか。

「殴られっぱなしなのは自分も、なんですがねぇ」

 ―――あぁそうだ、分かっている。分かっていても、彼を追う事を、やめることなぞ自分にできるはずがないのだ。彼は王子でも何でもない、世界を統べる魔王で、唯一の人間なのだから。自分は唯々諾々と命に従う蚕。人間の助けなしに生きることはできない。

「御伽話のように簡単な世であれば……」

 自分みたいな女にも、救いはあったのだろうか。そんならしくもない感情を見抜いたのか、興味なさげに見ていた彼女もふとこちらを見て眉を下げた気がした。

甘粕を振り向かせるのってマジで第二盧生(とその父)を越えなきゃならないので蚕さん頑張ってほしい、切実に。私は甘蚕ちゃんのファン。

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