出会ってからちょうど一ヶ月が経って、私もそろそろ自分の仕事に慣れてきた。というよりは慣れないとお仕置きされるので慣れるしかなかったというのが本音だ。それに伴い色々なことも学んだし、知ることが出来た。船員とも仲良くなることが出来た。例えば、エルモスさん。たくさんいるので誰がどのエルモスさんかはわからないのでみんなエルモスさんと呼んでいる。生前は船長さんの部下だったらしく、死んでもなお船長さんの部下でありたいらしい。素晴らしい船長愛だ。もうひとりはゾンババというドラゴンの子である。私より年上だが「おろろん」としか話せないし、背も少女と言ってもおかしくないくらいだ。そんなゾンババをゾンババちゃんと呼び今はいつも一緒にいる。船長さんはというと相変わらずだ。でも少しは親しくなった……と思う。
「ゾンババちゃん、今日はトロピコアイランド内を散歩しましょうか!」
「おろろ~ん」
「では、そうしましょうね」
にこりと笑いかければゾンババちゃんは嬉しそうに「おろろ~ん!」と言った。ふいにゾンババちゃんは私の服の裾をそっと握った。きっと手をつないで欲しいのだろう。言えばいいのに、とは思うもののきっとそれはゾンババちゃんの優しさなのだろう。迷惑だと思っているのか、本音を言わないのだ。手を差し出せばまたまた嬉しそうに鳴く。手をつないで船内を歩けばエルモスさんが「仲いいっすねー」と声をかけてくれた。船内の一番奥にある部屋へ向かう。出かける際には船長さんに伝えなければならないのだ。
「船長さーん。起きてますか?」
「おろろ~ん」
そうノックすれば中から船長さんがああ、だいたいわかった。と言いそれ以降は何も聞こえなくなった。
しかし耳を澄ませば規則正しい寝息が聞こえてくるのでクスリと笑えばゾンババちゃんもにこりとした。以前ゾンババのことについて船長さんに聞いてみたことがあった。それによると昔、暇だからという理由で千年の扉というところの100階ダンジョンに挑んだらしい。推測ではあるが暇だからという理由は建前できっと宝目当てで挑んだのだろうとは思うが―――。無事最後まで辿り着いて帰ろうとしたところゾンババと出会って、境遇が似ているから連れ帰ったらしい。ダンジョンの骨共は悲しがっていたんだがな、と言っていた。
「さ、許可もおりたので行きましょうか」
うん、と言う代わりにつないでいる手を力強く握りしめる。しかしこう見えて彼女はとても力が強いので若干痛い。ダンジョンの最下層にいるくらいだ、戦っているところは見たことないがきっと強いのではないだろうか。船から降りればさぁ……っと心地良い風が私とゾンババちゃんの髪をたなびかせては去っていくのを繰り返している。天気も良好、今日はいい散歩日和だ。
「風が気持ちいいですね」
「おろろ~ん」
今日はどこへ行こうか…と考えていたら奥にあるキャンプ場、というより拠点所といえばいいのか。そこから怒鳴り声が聞こえてきた。いきなりのことだったので少し驚いた。しかしいつものことなので放っておこうとしたら気になる単語が耳をかすめた。―――おいおいまたかよ。コンポビーとマルコのやつ。マルコ、たしかにそう言った。実はこのマルコというやつは見た目は馬鹿っぽいくせに交渉のこととなれば急に鋭い所をついてくる変なやつなのだ。以前船長さんもマルコとそのような出来事があったらしいが、内容はかなりフェアじゃないもので…。それ以来船長さんはマルコをどのようにいたぶろうかと企んでいる。だが何故か何回死の淵に立たされても運良く生きて帰ってくる、本当に変な人なのだ。
「マルコ―――」
「おろろ~ん」
「これはチャンスですよゾンババちゃん」
「おろろん」
「いいですか、ここであのマルコの魂を持って帰ることができれば」
「おろろん!」
「そう、その通りですよゾンババちゃん!」
フェアじゃない交渉を強いられ、挙げ句の果てにあたかも自分が説得したとでも言いたそうな顔をしていたものだから船長さんはそれにかなり怒っていた。実際はひげ野郎がいたからなのにマルコのやつ……と語っていたのを偶然聞いた。だからここでマルコを生け捕りにすれば……船長さんが手を汚すことなくマルコをとらえることができ、かつ船長さんに私だってやれば出来ることを証明することが出来るのだ。いつも「、てめぇホント不器用だな」と若干呆れたように言われるのが少しだけ悔しい。不器用なのはもう死ぬ前から知っている。皿を洗えば皿を割り、種をまけば転んで辺りに撒き散らしたり、散々な目にあってきたから。
「だけど問題はどうやってひとりきりにさせるか、ですよねー」
「おろろ~ん?」
「―――あ、いいこと思いつきました」
そのいいこと、を実行するために私とゾンババちゃんは忍び足でマルコのもとへと向かった。後からやらなければよかったと後悔することも知らずに。
船長さんと私②
マルコなぁ……いいキャラしてますよね。